悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

アゴタ・クリストフ悪童日記

こういうのもハードボイルドと呼べたりするのだろうか。

戦争、国家、法律、常識。

そういったものの歪みに対し、へし折れずに自分たちの倫理を貫く双子。

その凛とした面持ちが、曖昧さを極端に削ぎ落とした、事実のみで構成された文体から豊かに浮かび上がる。

読んでいて、痛快極まりない。

獣姦する少女、少女に手を出す司祭、同性愛者の将校なんてどうしようもない色物が出てきても劇的には描かないし、その是非も問わない。

ただそこに存在させる。

説教じみた暑苦しさを感じさせないその距離感もやはり痛快だ。