「命は大切だ、生きることが大事だ」と人は言う。

だが命とは、生とは、支離滅裂で、あさましくて、薄っぺらで、のんべんだらりと生白い顔をして地面をのたうちまわっている。

そういうものなのだ。

アレンの歪んだ顔、テルーの懸命な叫び、ハイタカの眼差し、クモの妖しさ。

ちっとも魅力的じゃない。

だが魅力的なものなんて本当にこの世にあるのだろうか。

どいつもこいつも紛い物、ただの出来そこない。

ゲド戦記』はその真実を白日の下に曝け出している。