■ - hopstepdrop

今日は麗

なによ。
そんな顔して。
あなたまでなにか――
私にリクエストが
あるっていうわけ？
――ふん。
ゲンキンなものね。
夏休みに入る直前、
私がようやく入手した――
あの真っ白な
サインウェーブも美しい、
02系丸ノ内線
リニューアル車の――
プラレールをせっかく
見せてあげた時には――
あんなに上の空だったくせに！
私だってあなたに見せるのは
もったいないし、
ちょっと惜しいとは思ったけど、
やっぱり家族だし――
それにあなただって一応は
オトコなんだから、
全然興味のない小雨ちゃんや
立夏ちゃんと違って――
少しはうらやましく
思っているかも、
と――思ったのに。
ふん。
そのくらい、いくら
私が５年生だからって
気がついてますよーっだ！
これだから――
オトコはキライ。
乱暴でガサツで単細胞で
鈍くて――
とにかくもう――
ドンカン!!!

なんやねん、この可愛い生き物。

あーあ。
日曜日から。
みんなが夏休みの
旅行の行き先について――
わんわんわんわん言ってきて――
私、とってもうるさくて
困ってるの。
星花ちゃんの中国とか
青空ちゃんのトトロの木、
っていうのはまあ置いておいても――

置いておいたげるのか、優しいな。

海晴姉様は温泉行きたいって
毎日のように顔を見ればクドクド言うし、
春風姉様はおやつをタテに――
恋愛成就の神社があるところにしようって
天使の笑顔でささやくし、
霙姉様は――
青き龍泉洞の地底湖に身を沈めたい――
とか、わけのわからないこというし。

訳が分からない！

というか姉さま方押しが強いな。

きっとこのまま決めないでいると
ずーっとこの騒ぎが続くんだ
と思ったら嫌になっちゃった。
夕凪ちゃんが賄賂の代わりに持ってくる
駄菓子のかけらも溜まる一方だし、ね。

かけらかよ！

全部やれよ！

だから――
とくに今行きたいところが
あるわけじゃないし、
本当はもう少し考えようかと
思っていたけど――
もう決めたわ。
今年の旅行の行き先は――
九州。
九州希望で決定！

うむ。

あ――
……
誤解しないでよね!!
私、別に九州新幹線に
乗りたいとか
そんなミーハーな理由で
決めたワケじゃない、
んだから――。

さいですか。