今日は綿雪

ただいま、帰りました!

お兄ちゃんは――

……

やっぱり――まだ、
帰ってない――

かな?

……

おぉーい、
いませんかぁ?

あのね――ユキ、今日
すごいことが――

……

やっぱり、いない――

ですよね。

「いませんかぁ?」がツボった。

綿雪がこういうこと言うのは珍しい感じ。

おうちの中はシーンってしていて――
そっか……チビちゃん達もお昼寝の時間だわ。

バカなユキ。

今日は4時間授業だから
ユキだって特別早く帰ってきたのに。

今日は特別な日だから――
もしかしたら特別に早く帰ってきてるかも!

なんて――勝手にお兄ちゃんのこと、
想像したりして。

お兄ちゃんだって、毎日とっても
忙しいんだし――それに。

ユキのお兄ちゃんって、あーんなに。
とってもかっこよくて優しくて、
すてきなんだもの――

きっと今ごろ学校でいろんな女の子から
チョコレートいっぱいもらったり、
デートに誘われたりしてるかもしれない――

……

どうしよう――

お兄ちゃん――ユキの事なんて忘れて、
今日は遅く帰ってくるのかもしれない――

トゥルー兄、幸せやな……。

切ないわ。

今日ね、ユキの学校では――
バレンタイン給食っていうのがあって、
特別に――デザートが小さなピーナツチョコだったんです。

それが、普通はただの丸いチョコなんだけど、
クラスに1つだけ当たり! のハート型チョコがあって――

なんとそれが今日はユキに当たって、
みんなにもすっごく誉められたし、
ユキも嬉しくて――きっとこれって
すごい幸運の印だって思って早くお兄ちゃんに見せたくて――

……

お兄ちゃんもきっと喜んでくれるって、ただそう思って――。

……

一生懸命に走って帰ってきたの。
なくさないようにぎゅって手の中に
握りしめて持って帰ってきたから――
少しとけて歪んじゃった小さな銀紙の包み。

こんなチョコレートじゃ、こどもっぽすぎて、
お兄ちゃんには似合わないかもしれないな。

うわぁああ、切ないなぁ!!!

胸が苦しいわ!!

ユキ――

早く、大人になりたい。

早く元気になって早く早く大人になって――
世界で1番大好きなお兄ちゃんと――

ただずっと一緒にいられたらいいのにな――
それがユキのこの世で1番の願いです。

うわぁあああ!

いじましいわ!