次は吹雪

感情というものは――
常に非常に主観的なものです。

そこには客観的な比較を可能にする
測定法というものがいまだ存在していません。

はい。

例えば――

私が熱いものに触れたときに感じる不快感と
麗姉が鉄道ダイヤの乱れに遭遇したときの不快感を
比べてどちらが大きいかを計ることはできません。

うぅん、どっちも割とすごそうな。

また――

作りたてのホットチョコレート
目の前にしたとき、
青空が激しく歌って踊り、
さくらが沈黙のウチに震えて
下着を濡らしたとしても――
どちらがより歓喜しているのかを
判断することはできません。

おい!そんなことばらすんじゃない!

ですから――

今年のバレンタインデーのイベントにしようと
春風姉が言い出した――

「誰が王子様を1番愛してるか競争」――

などというものは、まったく
意味を成さないと思うのです。

まぁねぇ……。

私にとって――あさひも青空も。
優劣のつけられない愛すべき存在であり、
それとまったく同じように、
キミもまた――

愛すべき存在なのです。

……

――たぶん。

え?

ですが、一応は――
家族の決まりに従って。

私がどのようにキミを好きかと
いうことを表現しておきましょう。

私は――

自分自身よりも
キミのことが好きです。

こんな――つまらない自分よりも。
キミの存在の方がずっとずっと
素晴らしいと思っています。

いや、吹雪も十分素敵だろう。

それはもう間違いないだろう。

だから――また。

いつか、その身体を――
観察させて下さい。

そうきたか。

いやぁ、こういうはぐらかし方は、吹雪らしい。