23:00 氷柱

もうすっかり――
夜ね。

ええ。

家族日記が終わるのは――
もういいわ。

仕方ないもの。

もう諦めた。

でも――

べつに、
家族日記が終わるからって――
私達、もう一緒の家に住まなく
なるっていうわけじゃないし、

何もかも諦める事なんて――
必要ない、わよね?

……

――うん。

だから――

あれから私――
ちょっと――
考えてみたんだけど。

ほら、その――
なんていうのかな、

個人的な家族日記?

そういうの始めてみるのって
どうかしら?って――

そう思って――

……

あ、まあ、ほかに
やる人がいなくって
2人でやるっていう
ことになれば――
もちろん、それは別名、

こ、こここ――

交換日記とも――

言うかもしれないけど。

……

――あ!

ち、違った、ごめん、
やっぱそれは恥ずかしすぎて
死にたくなるから――

できれば下僕とご主人様の
業務用連絡日誌っていうことに
しておいた方がいいとは――
思うんだけど。

……

どう思う?

まあ――返事は別に
いつでもいいわ。

ただ――なんとなく
そういう可能性もあるって
そう思っていれば――

私もスッキリするっていう
だけのことだから。

はい、これ――
新しい日誌用ノート。

用意しておいたから――
今度はあなたから始めて。

待ってるわ。

だって私は本当はいつだって――

あなたから話しかけられるのを
待って――

いたんだから――

……

この鈍ちんの下僕アタマ。

私にこんなこと言わせるなんて――
ズル過ぎて――

許さないんだから――ね。

ありがとう。

きっと書いて、きっと渡すよ、氷柱。