ブラック・スキャンダル』を観た。

昔読んだ花村萬月の『笑う山崎』という小説で、ヤクザが堅気のタクシー運転手に「ヤクザにモノ頼むなんてアホのすることや」と言うくだりがあったのを思い出した。

何というかとにかく「微妙に地味」という印象を受ける。

「昔なじみを通じてFBIと協定を結び、イタリアン・マフィアを排除することでのし上がっていく」という展開の割にジミーがちっとも景気良さそうに見えなくて(着てる服も、住んでる家も、乗ってる車も変わらない)何だか盛り上がらないし(実際のジミー本人がそうだったんだろうけど)、ヤクでトリップして大暴れとか、パトカー数台とカーチェイスとか、市街地での銃撃戦とかそういうのも無く、淡々と駐車場やら河原やらガレージやらで事が済んでいくのも侘しい(ヤク中の密告者を始末するところはちょっと派手なんだが、白昼の人気のある駐車場でぶちかまし過ぎで、そこだけ他の描写から浮いてる)。

同じ監督の前作『ファーナス』も「いくらでも画的に盛り上げることができる題材を選んでるのに、仕上がりは淡白」っていう感じだったので、もう何かそういう人なんだろうな。

FBIに勤めるジョンのギャングであるジミーに対する果てのない忠誠心(と、それに見向きしない非情なジミーの振る舞い)に焦点が絞られてるので、何かそういうのが好きな人には薦められる。

あと後半にある、ジョンの家での食事の嫌な雰囲気はデヴィッド・エアー監督の『フューリー』以来の嫌さ加減だったので、そういうのが好きな人にも薦めておこう。

しかしジミーを演じたジョニー・デップの前歯はこのためにいじったのかな、大変だな……。