バットマンvsスーパーマン』を観た。

以下はネタバレ込みの感想。






去年『アントマン』が公開された頃にザック・スナイダーが「マーヴルと違って、僕たちは神話を作ってる」とわざわざ挑発的なことを言って、非難されたりしていたが、実際に本作を観ると、「あ、本気で神話を作りたかったんだな」と気づかされる。

一応のシリーズ前作であるところの『マン・オブ・スティール』も宗教画めいたレイアウトや、教会で神父と話すクラークの後ろにキリストが描かれたステンドグラスを映すというあからさまな演出をしていたわけだが、今作ではそれに輪をかけて露骨だ。

やたらと「神」という言葉が頻出するうえに、何と槍が重要なアイテムとして登場するのだから。

神の子を槍で処刑……もうここまであからさまにされるといっそ清々しい。

おまけに死後の復活すらほのめかされている。

という訳で、神の子スーパーマンが背負っていた「正義」の信徒と化したバットマンワンダーウーマンはその教義を広めるべく活動を開始するという次第。

バットマンにいたってはそれまで長々と煮えたぎらせていた怒りを水に流してまで。

何というかここまでくると強迫観念めいたものを感じる。

で、その「正義」だが、そもそも『マン・オブ・スティール』ではその「正義」の危うさが指摘されていたわけだ。

要するに「正義のため、平和のためとは言え、一般市民をあそこまで巻き込むことは許されるのか?責任があるのではないのか?」と。

俺はその答えが描かれるんだろうと思ってたし、実際答えはあったんだけど。

でも、まさかそれが「強大な力がぶつかったら犠牲が出るのはやむをえないし、でもやるべきことはやらないとダメだし、だから無人地帯で戦うね」という代物とは思ってなかったんですよ。

「スーパーマンバットマンワンダーウーマンドゥームズデイと街中で死闘を繰り広げながら、一般市民も必死に守る!何故ならそれがヒーローだから!」みたいな展開に落ち着くかと思ったら、まさかの一手ですよ。

いや、その考えは現実的なのは認めるんですが、実際人死には出てないみたいなんですが(でも普通あんな規模の石油化学プラントなら夜勤の人とか警備員とかいるだろ。そして絶対爆死してるだろ)、それでも、それはペシミズムに負けてないですかとその辺、ちょっと正直もやもやしている。

「楽しくなかった?盛り上がらなかった?」と聞かれると「楽しかったよ!盛り上がったよ!!」とは答えるけども。

正直この後続く『ジャスティス・リーグ』二作?もザック・スナイダーがこのノリで仕掛けてきたらしんどいかなって。



以下、とりとめのない雑感

・冒頭のブルースの幼少期の回想でのファンタジックな演出と、続くゾッド争乱時の回想でのブルースの懸命な表情でちょっと涙腺が破れかけた。

・が、バットマンの初登場シーンに度肝を抜かれる。何だあのポーズは!!!すげぇ!その後の退却の仕方もすげぇ!

・冒頭、何でトーマスはマーサの名前を呼んだんだろうと思ったら、まさかああいう回収をしてくるとは思わなかったし、というかそもそもブルースの母親とクラークの母親の名前が同じってことに今さら気づかされて、「うまい!」と膝を打った。

・予告編で話題になってたあの砂漠のシーン、さすがに悪夢だと思ってたらやっぱりそうだったんだけど、フラッシュがいきなり登場することで、未来のビジョンであったことが分かってびっくりした。

ワンダーウーマン、確かにかっこいい、というか、登場と同時に流れるBGMがかっこよすぎて盛り上がらざるをえない。あとドゥームズデイでド突きあいしてる時にニヤリとしてて、「この人、本当にアマゾネスだ!」と震えた。

・クラーク、ブルース、ルーサー、この三人とも自分の父親の影響を受けてる。「人々の希望となれ」「人は路地裏で理由もなく死ぬ」「神は全能かもしれないが、善人ではない」

・スーパーマンとの決闘に向けて「特訓?特訓やったら、とにかく重いものを何か色々するのが王道や!」と言わんばかりの昭和テイストの特訓をするブルース、味わい深かった。

・『マン・オブ・スティール』の時からガバガバだったクリプトンのセキュリティ意識はやはり健在。「その行為は元老院から禁じられています」「今、元老院はどうなっている?」「存在しません」「じゃあ、問題ないだろ」「そうですね」、アホか!!!!!

・スーパーマン及び素顔を晒しているヒーローに特有の「いや、思いっきり顔見えてるんだから、すぐ正体ばれるだろ」という長年の疑問が、あっさりルーサーがスーパーマンたちの素性を把握したことによりちょっとガス抜きされた。

・アーマーバットマンとスーパーマンの決闘、クリプトナイトから精製したガスを食らわせることで優勢に持ち込んだものの、バットマンのパンチの連打が徐々に効かなくなっていって、スーパーマンがにやりとする演出が痺れる。

・スーパーマンが口にする「僕の星」の意味するものの変遷はもうあからさまに「感動するでしょ?」って感じなんだけど、まあ、感動したよね。でもあなた、『マン・オブ・スティール』の時、「わいはカンザス生まれのコテコテのアメリカ人や!」って堂々と言ってましたよね。

・終盤、バットマンが投げ捨てていた槍をロイスが放り捨てる場所が思いっきりリチャード・ドナーが撮った『スーパーマン』の一作目に出てくるレックスのアジトそのまんま。『スーパーマン』でもクリプトナイトが放り込まれていたね。

・それにしてもバットマン、ためらいなく人を殺し過ぎではないか。