■
ベストアルバム
1位
デスメタルなのか、ブラックメタルなのか、ひょっとしたらシンフォニック、もしかしたらファンク。
ごった煮すぎて、ポップでキャッチー。
到達点だと思われた前作『UROBOROS』の先がまだあったという事実にただただ圧倒された。
メタルにはまった今年後半の気分にもぴったりはまった。
2位
Tyler,The Creator『Goblin』
「俺は歩く矛盾」と冒頭で宣言する”Yonkers”がリード・シングルとなった今作は、ショッキングなアンビエントという不気味な仕上がりだった。
心療内科のWu-tang Clanか、悪夢を見たBoards of Canadaか。
3位
坂本真綾『Driving In The Silence』
冬、それは温もりを感じる季節。
4位
James Blake『s/t』
James Blakeの待望のデビュー・アルバムは「人に何かを伝える」ということに対しての屈折した感情の生々しい発露に満ちていた。
ダブステップという時代の表現を通過した新しいブルー・アイド・ソウル。
5位
Sherbets『Free』
ここ数年の浅井健一のリリースペースは異常で、そのせいで一つ一つのツメが甘い感じがしていたのだけれど、解散騒ぎを経てのこの新作はよくまとまっているように思う。
"これ以上言ってはいけない"の気だるさや"青いサングラス"の切なさ、そういったものを穏やかな視線で捉えるような音が心地よかった。
6位
Chthonic『Takasago Army』
台湾のシンフォニック・ブラックメタル。
二胡の使用や台湾語で朗々と歌い上げるその姿がオリジナリティを感じさせるのは勿論、演奏のテンションの高さ、ボーカルのシャウトのキレの良さが素晴らしい。
7位
Iron and Wine『Kiss Each Other Clean』
ゴスペル、フォーク、ソウル……アメリカとアフリカの両方に足を置く音楽性はまさにワールドミュージック。
今年発表された同じようなサウンドだと、Beirutの方が評価されている雰囲気があるんだけれど、個人的にはこちらの方がポップ・ソングとしてかっちりしてるので好き。
ベースの音やサムの歌声が異様に気持ちよかったのもポイント高し。
8位
TV On The Radio『Nine Types Of Light』
人気のあるVampire WeekendやFriendly Firesみたいなエクレクティックなポップス。
前作よりゴスペル色が薄まり、デジタルでクリアなサウンドになった。
9位
チャットモンチー『YOU MORE』
90年代のUSオルタナを感じさせる甘枯れした太い音色のギターが良い。
シンプルなアレンジのギター・ポップもあれば、Vampire WeekendやDirty Projectorsを彷彿とさせるエキゾチックなものもあって、スリーピースという制限をものともしない気概を感じさせる。
胸の中に温かい気持ちが広がる一枚。
10位
Jay-Z & Kanye West『Watch The Throne』
共作とはなっているが、去年Kanyeが発表した『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』と同じような雰囲気のものが多い。
ビザールでありながらスタンダード、ブラック・ミュージックの広さと深さを感じさせる実に魅力的な作品。
11位
The Birthday『I'm Just A Dog』
乾いている、ささくれだっている。
でも、もう若くない。
だからこそ出せる音、似合う音があって、この作品はそういう音を鳴らしている。
ガレージから遠く離れ、知らない町へ向かう根無し草のジャズ、ブルーズ、ロックンロール。
12位
Common『The Dreamer /The Believer』
The Roots『undun』で微妙にはぐらかされた期待に応えてくれたのが、Commonだった。
No.I.D.と久方ぶりにコンビを組んでの新作は、柔らかく濃密な光を放つソウルフルな逸品だった。
13位
Vader『Welcome To The Morbid Reich』
Behemoth、Decapitatedといった優れたメタル・バンドの産地として知られるポーランド、その中でも最も歴史が長く、偉大なバンドと言えば、Vaderだろう。
デスメタルの歴史の黎明期から活動を続ける彼らだが、基本的にどの作品も音楽性はほとんど変わらない。
シンプルだが刺激的なリフ、爆走しながらもグルーヴのあるドラム、ほどよく利いたケレン味。
今作も実に手堅く、良い。
14位
Wolves In The Throne Room『Celestial Lineage』
と、聞くとなんだか身構えてしまうが、一曲目の冒頭からアンビエントなサウンドに合わせて女性のたおやかな歌声が流れると、すんなりと音の渦の中へ没入していく。
ブラストビートと絶叫が鳴り響き、いかにもブラックメタルらしくもあるが、アナログ・レコーディングによる音は適度な柔らかさを保ったままで、アンビエントなポストロックとして聴けるような仕上がり。
15位
DJ Quik『The Book Of David』
西海岸のベテランの6年ぶりの新作は、最初から最後まで1時間にわたり、ずっとメロウかつファンキーな音が繰り広げられる。
キーボードもビートもすごくポップなのに、全然下品じゃなくて、むしろ上品とすら感じるのはさすが匠の技ということなのだろうか。
次点
Drake『Take Care』
Kanye Westの『808s & Heartbreak』を水増しした後、ガムシロップを大量に注ぎ込んで煮詰めたような代物。
ヒップホップ界のColdplayとでも言えばいいのか。
Benighted『Asylum Cave』
フランス生まれのブルータル・デスメタル。
やたらと多芸なボーカル、やたらと複雑な展開、だが決して損なわれない攻撃性。
LAMA『New!』
ナカコー:ミキ:ひさ子:牛尾=4:2:1:3ぐらいの配分で構成されたエレクロニクス・ギター・ポップ。
はっきり言えば既視感ばりばりの作品なんだが、それでもいいやと思わせる程度にはよく出来ている。
ナカコーとミキの歌声が重なる快楽はやはり捨てがたい。
Cloud Nothings『s/t』
The Ramones、Buzzcocks、Weezer……へなちょこな青年たちの疾走するロックンロールの系譜、その最新型。
アナログフィッシュ『荒野/ On The Wild Side』
以前ほどの奇矯さは薄れたが、言葉の突き刺すような鋭さ・強さは増した。
フォークからダンスミュージックまで一通り揃っている。
"No Way"と"チアノーゼ"のどうしようもない、どん詰まりな感じお気に入り。
総評
今年はメタルと、去年に引き続きヒップホップに熱中した一年になった。
スラッシュ、デス、ブラック……要するにヘヴィで、ハードで、無慈悲で、血の匂いがするのが好きなんだと確認できた。
バンドで言うとCannibal Corpse、Death、初期Arch Enemy、Deathspell Omega、Emperorとか、まあ非常に大御所ばかりですが。
ヒップホップは熱中したと言っても、新作を追ってたぐらいで、掘り下げとかはできなかったな。
年始にWu-tang Clan周辺のソロの過去作をちょっと漁ったぐらいか。
2012年はいい加減にチル・ウェイブの波が引いて欲しいかな。
ベストソングは特に無し、かな。
なんか一曲に入れこむことがあんまり無かった。
ベストライブは11月1日のDIR EN GREY。
次点で1月のDeerhunter。
来年も素晴らしい音楽に出会えますように。